赤ちゃんはとても早いスピードで成長します。特に生まれてから2週間ほどは最も成長が早く、その日その日しか見ることのできない姿があります。
でもこの時期というのは、ママたちは出産のダメージが取れていないまま慣れない育児に奮闘し、寝不足が続いたり疲労が溜まったりして心身ともに疲れ果てている時期でもあります。そのため、この時期の赤ちゃんの姿をあいまいにしか覚えていないという方も多いんです。
そんなあいまいな記憶を、確かな記録として残してあげたい。これが、私がニューボーンフォトを撮り続ける理由の一つです。
ニューボーンフォトというのは、新生児期特有の柔軟さを活かした写真です。お腹の中で丸まっていた記憶が鮮明に残っているのがちょうどこの頃までですから、生まれてすぐの柔らかい体を活かしてできるだけまん丸い体勢で写真に収めるようにしています。産後2〜3週間を過ぎると関節も硬くなって手足を伸ばしたりする動作も増えてくるので、撮影は出産後14日以内と決めています。
アルバムは、見える場所に置いてもらえるものを
ニューボーンフォトは非常に難しい作業です。私たちフォトグラファーは全身全霊で写真を仕上げるので、出来上がった写真はぜひ見える場所に飾ってもらいたいと思っています。
私のお客さんのなかで最も選ばれる方が多い商品が『pasta』。置く場所を選ばないカジュアルな作りで贈り物にも適しています。オンデマウントの技術をパネルに応用した『オンデパネル』は、しっかりとした厚みがあってクオリティが非常に高い商品なので、インテリアとしてお部屋に飾っておきたいというお客様によく選ばれています。
ほかにも、表紙と裏表紙がアクリル仕様の『ボードACX』など、部屋に飾れるもの、一つのアートとして成立するものを中心に取り扱っています。
ニューボーンフォトのプランに含まれている『メディアケース』は、表紙に名前や日付、身長・体重、妊娠期間などのデータを入れることができ、裏面にも写真を入れることができる商品です。DVDを見るときだけでなく、このまま部屋に飾ってもらえるように、インテリアに馴染むものを選んでいます。
ニューボーンフォトを知ったのは、20代の頃にアメリカのコネチカットを旅したとき。新生児がほおづえをついている写真に出会い、「これは何?」と尋ねると「ニューボーンフォトだよ」と教えてもらいました。当時日本でニューボーンフォトはほとんど知られていませんでしたが、アメリカではすでに広く知られていました。日本では「お宮参り」がプロに撮ってもらう最初の写真ですが、海外ではニューボーンフォトがそれに当たると思います。
現在はニューボーン専門のフォトグラファーとして活動していますが、以前はブライダルの前撮りやキッズの撮影を行なっていました。お子さんの写真を撮っているうちにコネチカットで出会ったニューボーンフォトをふと思い出し、出産を控えた友人に「赤ちゃんのニューボーンフォトを撮影させてもらえないか」とお願いしたのがはじまりです。
当時私は、赤ちゃんの寝かしつけをしたこともなければおむつを替えたこともなく、そもそも新生児の赤ちゃんに触れたこともなかったので、初めての撮影は思っているような写真が全く撮れず大撃沈でした。と同時に、ニューボーンフォトの難しさや赤ちゃんを取り扱うことの危険さを身をもって感じ、ニューボーンフォトを極めてみようと決めました。
そこからニューボーン撮影をはじめるまで、1年ほど期間を空けています。デリケートな新生児を扱うための医学面や安全面の知識を身につけるための準備期間が必要だったからです。
ニューボーンフォトのご依頼は、早い人で妊娠5ヶ月目くらいから。出産までの期間に、どのような写真を撮りたいかどんな色味がいいかを伺い、イメージ写真を送ってもらったりしながらお互いのイメージをすり合わせます。
撮影当日に初めてお会いする場合がほとんどなので、当日までにできるだけLINEでコミュニケーションを取りながら関係性を築いておくようにしています。私の理想は、友達になれるくらいの距離感ですね。当日ギクシャクした雰囲気だと撮影もスムーズに進みません。みんなで一つの作品を作り上げるイメージで撮影をしたいので、わきあいあいとした雰囲気で撮影できるように心がけています。
撮影に必ず持参しているのが、ホワイトノイズという、人間がリラックスするといわれている音を出す機械です。これを聞かせると赤ちゃんはぼーっと聞き入ってくれるので、リラックスした頃を見計らって赤ちゃんに合わせた“寝かしつけテクニック”で寝かしつけ、撮影に入ります。
赤ちゃんにもそれぞれ好みがあって、縦揺れが好きな子もいれば横揺れが好きな子もいて、顔を触られるのが好きな子もいれば逆にそれを嫌がる子もいます。そういった好みを最初のスキンシップで探りながら撮影に挑みます。
寝かしつけの基本は、カメラマンがどれだけリラックスしているかだと思います。緊張したり怖いと感じていると自然に力が入って、赤ちゃんもそれを感じとってしまいます。とにかく可愛い可愛いと愛しむ気持ちで赤ちゃんを抱いてあげると自然と包み込むように抱くことができるので、リラックスして徐々に眠りについてくれます。
お客様からよく「寝かしつけテクニックを教えてほしい」と言われます。特にパパから聞かれることが多いですね。緊張しながら抱っこされている方も多いので、まず赤ちゃんを抱いてもらって、角度や手の位置などをアドバイスさせてもらうときもあります。男性のほうが体が大きく安定感があるので、馴れればパパの抱っこのほうが赤ちゃんも安心するんじゃないかなと思います。
レッスンで最も時間を割いているのは、ママへのケア
ニューボーンフォトの経験を活かし、マンツーマンレッスンやグループレッスンなど、ニューボーンフォトを教える側の仕事も行なっています。
私はニューボーンフォトの主役はママだと思っているので、「この子を産んでよかった」と思ってもらえる写真を残さないといけない。ニューボーンフォトを教えるにあたって最も時間を割いているのは、ママへのケアです。
産後の状態は一人ひとり違うので、ママの状態に合わせてどのような対応をすればいいか、どんなふうに声かけをすればいいか、逆に「こんなことは言わない方がいいですよ」といったように産後のママのタイプ別の対応方法をお伝えしています。
また、産後うつは産後2〜3週間で発症しやすいといわれていて、ニューボーンフォトはまさにそのタイミング。産後うつの方にお会いする可能性も大いにあるので、産後うつがどういうものか、どんな対応をすれば安心されるのか、産後うつに対する知識もしっかりと伝えるようにしています。
これまではニューボーン撮影にのみに限定していましたが、今年福岡市内にスタジオをオープンし、生後6ヶ月〜1歳半くらいまでのお子さんの撮影もスタートしました。
ニューボーンフォトのご依頼は、2人目、3人目のお子さんが圧倒的に多いですね。1人目のお子さんの時はニューボーンフォトを知らなかったという方が多く、2人目は絶対ニューボーンフォトを撮りたかった!とおっしゃってくださいます。過去にニューボーンフォトを撮影された方から、次のお子さんのニューボーンフォトをご依頼をいただくことも増えてきました。
私は、「無私の愛」というテーマでニューボーンフォトを撮っています。ママたちは報酬や見返りもない、いわば無私の気持ちで子どもにたくさんの愛情を注ぎ、一生懸命子育てをしていらっしゃいます。大きくなるにつれて思うようにいかなかったり言うことを聞いてくれなかったりすることもあると思いますが、ニューボーンフォトを見返してもらうことで、当時の記憶や愛情を思い返してもらえるといいなと思っています。
世界・日本でも数少ない男性ニューボーンフォトグラファー。
新生児だけを扱う専門としてこれまでに900人以上の新生児を撮影。
一瞬でかわりゆく貴重な時期を残すことによって出産を頑張ったママの育児の糧にしてもらうことを意識して携わっています。
現在では「安心」「安全」を意識したニューボーンフォトを広めることを目標にプロカメラマンに教えるワークショップやマンツーマンによるハイレベルな講座を全国で開催しています。