礒企画は、今から40年前に、私の母である社長の礒美記代(いそみきよ)が娘のためにベビー服を作ったことがはじまりです。最初は自分の子どものために作っていたものを代官山の店頭に並んだことからベビー雑誌の編集者の目にとまり、ベビー服ブランド『妖精の森』を立ち上げることになりました。当時は、主婦が仕事を持つこと、子どもがいる女性が働くということが大変難しかった時代。そんな女性たちに働く機会を与えたいという思いが私たちの理念の一つになっています。
弊社は、礒企画の最初のブランド『妖精の森』、オーガニック100%の生地を使用した『Amorosa mamma -天使の糸-』の2つのベビー服ブランドを展開しています。なかでも、オーガニック100%にこだわった『Amorosa mamma -天使の糸-』は、「オーガニック」という言葉が今ほど浸透していなかった約20年前に立ち上げた弊社の主力ブランドです。
2つのブランドに共通するのは、手の仕事による “温かみ”を大切にしていること。全ての商品にボタンや編みモチーフなど手作業でしかできない小さな工程を加えることで、同じ商品でも一つひとつ表情が異なった温かみのあるアイテムになります。
360°どこから撮っても世界観を感じることのできるスタジオ
スタジオ名の『クローシェ』は、西洋料理で使われる食器の蓋のこと。クローシェをパッと開いたときに感じる驚きや感動の一瞬を体験していただき、人生の物語を写真として残してほしいという思いがスタジオ全体のコンセプトになっています。エントランスを通った瞬間から『クローシェ』の世界観を体感していただけるよう、スタジオ内はもちろん、庭やトイレなどの撮影に使用しない場所までも徹底的にこだわりました。
またお客様が『クローシェ』の世界観に入り込めるようにするには何が必要かと考えたとき、撮影用のセットではない、リアリティを追求した生活空間が必要だと考えました。本棚があったらそこには本があって、アンティークのミシンには誰かが昔作っていただろう古いレースやボタンがあって……といったように、本物の生活雑貨を揃えることで、360度どこから撮ってもフロアの世界観を保つことができる空間です。
1階は南フランスの田舎の素朴さをイメージし、青や白を使ったシャビーシックな内装。2階はクラシックなヨーロピアンスタイルですが、着物にも合うよう京都の和紙を壁紙に使用しています。3階は存在感のある20年を経たオリーブの木を主役に森をイメージした内装とフランスの舞台で実際に使われていたものを設置。それぞれのフロアごとに異なるコンセプトを持たせています。
後発だからこそのプレッシャーもありました
2020年、自社ブランドのカタログ撮影が終わったタイミングで社長から「フォトスタジオ、できるかもね」という話が出たんです。ベビー服の撮影や、社長がこれまで十数冊の書籍を出版していることもあって、スタジオでの撮影は私たちにとって身近なものでしたし、社長のなかにも「いつかは自社でフォトスタジオを」という思いがあったので。少子化でお子さんの撮影も減ってきている時代ですが、ピンチをチャンスに変える絶好の機会ということで一念発起しました。私自身カメラの経験がありカタログ撮影のサポートに入っていたことや、倉庫として使用していた旧本社の場所があったことなど、いろいろなタイミングも合わさり、“やろうと思えばできる”という気持ちと環境が整ったことも大きかったと思います。
とはいえ、全くの新規事業ですし、そもそもフォトスタジオをどう運営していけばいいかさえわからない状態だったので、いろんなスタジオさんのホームページを見たり見学に行ったりして情報を集めるところからのスタートでした。フォトスタジオとして私たちは後発なので他社と同じことをやっていては意味がないし、やるからにはとことんまでこだわったスタジオにしようと決めたものの、「他社よりも良いものを作らないと勝てないだろう」というプレッシャーがあったのも正直なところです。
スタジオの工事はとにかくスピード勝負でした。世界情勢の影響で建築材料がどんどん高騰しはじめ、時間が経てば経つほど材料費が上がってしまう時期だったので、コストを抑えるためにも急ピッチで進める必要があったからです。通常なら設計図が完成してから床材や壁材を決めて、レイアウトを決めて、と進めていきますが、私たちはこれらの工程を3フロア同時進行。しかも、レイアウトが決まったあとにエレベーターを設置しようということになったり庭を作ろうということになって、その度に一から図面を書き直したり……。もちろん礒企画としての通常業務もありましたので、当時は本当に大変でしたね。
海外の業者と直接コンタクトを取って直輸入も
社長も私も大変こだわりが強いので、建築業者さんから提案される資材や床材ではおそらく納得のいくものがないだろうと思っていて。ネットでヨーロッパ調の空間演出をリサーチし、気に入った資材を見つけたら素材名を調べて、取り扱っている業者を探して交渉して……と、スタジオ内に使われている壁材や床材、家具などほとんどのものは建築業者さんを通さずに自分たちで仕入れました。
アンティーク家具は1台で数万円、数十万円とけして安いものではないですし、しかも3フロア分必要だったので、もう一体いくらかかるのっ?って(笑)。新規事業ということもあって会社としての負担はかなり大きかったのですが、やはりこだわりの方が強かったので、送料なども細かく計算して、日本で手に入らないものや海外から直接買った方がコストを抑えられるものはアメリカやヨーロッパの業者に直接コンタクトをとって輸入したり、国内のアンティーク家具の競りに足を運んだりもしました。1日何時間もネットオークションをチェックし続けた時期もありましたね。
『クローシェ』の世界観をアップデートし続けていく
当社の売れ筋商品は、お好きな文字を刻印したケースに12枚の厚手のフォトカードを収納できる『ミニパネルボックス/レクタングル』です。アスカブックさんでは、『ギャラリーBOX』という名前ですね。アクリルの専用スタンドがついていて気軽に飾っていただける使い勝手の良さや、12枚のうち4枚を自分用、残り4枚ずつをそれぞれのご両親に、といったようにご家族みんなでシェアできるところが喜ばれている理由です。長方形と正方形の2タイプがありますが、編集のしやすさなども踏まえて長方形をおすすめしています。
お子さんの写真って、笑っている写真や正面を向いたかっちりした写真だけでなく、横を向いている写真も泣いている写真も素敵ですよね。いろいろな表情を引き出すためにも、撮影中はお子さんを自由に遊ばせることがメインになります。のびのび動いてもらったり所々でその場に止まってもらったりと誘導できるよう、ぬいぐるみや編み物で作ったフルーツのモチーフをはじめ、お子さんが興味を持つような工夫を凝らした小物や遊び道具を揃えています。スタジオに置かれている布系の小物は全て自社製作のオリジナルアイテム。衣装に関しては、今は海外製のドレスを多く揃えていますが、必ずどこかに一手間を加えて個性をプラスしています。また、クローシェでしか着ることのできないお子さん向けのオリジナル衣装も用意していて、今後はバリエーションも増やしていく予定です。
スタジオとして今が完成形だとは思っていません。「クローシェで撮りたい!」と遠方からでもお越しいただけるお客様も増やしていきたいですし、もっともっと多くの方に『クローシェ』の世界観を体感していただけるよう常にアップデートし続けていきたいです。それが、“ベビー服ブランドが運営するフォトスタジオ”という看板を背負った私たちの責任であると思っています。
2022年、ベビー服会社の新規事業としてのフォトススタジオ「cloche -My little story-」の設立に一から携わる。
企画や建築のことから始まり、留学経験を活かした海外からの建材調達やアンティークでの空間演出など一つ一つ細部までこだわりました。
写真を撮るというのは大前提に、撮影日を特別な空間で特別な時間にすることを日々大切にしております。
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